デザイン部の齋藤です。
スタートアップテクノロジーデザイン部は、UIデザインを中心に、主にクライアントワークを担当しています。
先日社内で、1日短縮版デザインスプリントを実施し、私は進行役のファシリテーターとして参加してきました。デザイン部からは他に、デザイン担当者、運営サポートなどを役割分担し、参加しています。
この記事では、デザインスプリント実施のための計画や、当日の様子、次に繋げるための改善アイデアなどを備忘録としてまとめています。
これからデザインスプリントの導入を検討している方や、すでに実施経験がある方々の、参考事例として役立てていただけたら幸いです。
目次
- デザインスプリントとは
- 経緯
- デザインスプリントで何を知りたかったのか?
- 結論
- 計画
- 当日の流れ
- 持ち物
- 参加ルール
- 解説
- ペルソナ策定
- ユーザージャーニーマップ作成
- 8アップ
- ストーリーボード作成
- 評価&投票
- サイレント評価
- グループでの投票
- スーパー投票
- 振り返り
デザインスプリントとは
デザインスプリントとは、デザイン上の問題を解決するために、5日間という短い期間で高速にプロトタイピングと検証を行う方法論(フレームワーク)のことです。
課題を定義し、解決策を練り、アイデアをもとにプロトタイプを作成し、ユーザーの評価検証までをスピーディーにおこなえるのが特徴です。
あくまでもUXなどに特化したフレームワークで、適切な問題設定ができるかどうかが重要とされています。
経緯
デザインスプリントで何を知りたかったのか?
現在進行中の社内プロジェクトにおいて、関係者それぞれが利用者の共通イメージを持ってはいました。ただ、メインターゲットとなるユーザーについて、可視化しきるまでには至っていませんでした。
そこで今回は、プロダクト理解を深め、ペルソナ・ジャーニーの認識をすり合わせ、課題解決のアイデアをまとめあげるところまでを対象範囲とし、デザインスプリントを実施しました。
結論
絵にすると明らかに議論が活発になり、アイデア実現に向けて具体的に話せるようになったことが、一番大きな収穫でした。
関係者がまとまった時間をとって、確実に前に進める意思を持って取り組めたのも、良い経験でした。
副次的な効果として、参加者のモチベーションが上がりに上がって、これまで以上に前のめりで事業に取り組むようになれたという声も出ています。(これはチームドリンクやその後、議論が活発になったおかげかもしれないです。)
以下では、計画と当日の様子、振り返りについてふれていきます。
計画
実施するにあたってまずは、デザインスプリントの基礎知識をまとめた資料を展開しました。
また、1日という限られた時間の中で、どんなアウトプットを期待するかを話し合い、当日の実施スケジュールを作成しました。
このあたりの話は特に、書籍を参考にさせていただきました。
当日の流れ
- 目線合わせ(12:00 – 13:00)
- 12:00 – 12:20: デザインスプリントについて(20m)
- 12:20 – 12:30: 参加ルール説明(10m)
- 12:30 – 12:50: 事業について(20m)
- 12:50 – 13:00: 今日のスケジュール確認(10m)
- ランチ(13:00 – 14:00)
- 前半戦(14:00 – 16:00)
- 14:00 – 14:50: ペルソナ策定(50m)
- 14:50 – 15:00: 休憩(10m)
- 15:00 – 15:50: ユーザージャーニーマップ作成(50m)
- 15:50 – 16:00: 休憩(10m)
- 後半戦(16:00 – 17:50)
- 16:00 – 16:05: タスクストーリー(5m)
- 16:05 – 16:15: マインドマップ(10m)
- 16:15 – 16:45: 8アップ実施(30m)
- 24m = 5分で考えて1分ずつ発表×7人、計12分×2回
- 16:45 – 17:15: ストーリーボード作成(30m)
- 17:15 – 17:20: 休憩(5m)
- 17:20 – 17:25: サイレント評価(5m)
- 17:25 – 17:45: グループでの投票(1人につき3m×7、計21分)
- 17:45 – 17:50: スーパー投票(5m)
- 振り返り(17:50 – 18:00)
- チームドリンク(18:00〜)
持ち物
必要な物について、手持ちのありなしを確認することからはじめました。
- 太めのサインペン
- 大量のポストイット(最低限、横長と正方形)
- イーゼルパッド(でっかいポストイット)
- A4のコピー用紙
- 磁石
- マスキングテープ
- ホワイトボード
- ホワイトボードマーカー
- ホワイトボードイレーザー
- タイマー(スマホでも良い)
- 丸いシール
- でっかい丸いシール
- ハサミ(途中で必要になった)
- 写真撮影用カメラ
- 録音機(アイフォンでも可)
- お菓子
- 飲み物
参加ルール
ルールに反したふるまいをみかけたらきちんと指摘すること、自分で気づいた場合も、自分で自分に指摘することをお約束として共有しました。
- 全員が参加
- 誰かが発言している時は発言しない
- 他人のアイデアの批判を控える
- 居心地よく過ごす(暖房とか椅子とか音楽とか)
- 人に優しく、アイデアに厳しく
- 時間を守る
- どうしても必要にならない限りスマートフォン、PCは使わない
- 必要なものはプリントしたり、プロジェクターで映したりします
- メモは紙でとる
- 略語や社内用語は、誰にでもわかるように伝える
- 略語リストにためてもいい
- 否定的な発言は禁止(「はい、でも…」は禁止)
- 「はい、そして…」、「はい、なぜなら…」と話そう
- ふせんは横から剥がそう(反り返らないため)
- 年長者は若手の意見を妨げないように留意する
- 逆目線でも物怖じしないように
- 上手くいかない方法がわかった場合も、それは進捗ととらえる
解説
ペルソナ策定
ペルソナ策定をするにあたってまずは、サービスに関わる登場人物を整理するところからはじめました。
このタイミングで、すでに得られていたユーザーインサイトも全体共有してもらいました。
今回は、重要なステークホルダーで、顧客でも利用者でもあるコアユーザーを対象とし、ペルソナ像について話し合っています。
最終的にまとめ上げたペルソナは、以下の項目にまとまりました。
- イラスト
- 名前
- 年齢、性別
- 職業、年収、学歴、居住地
- 性格
- その他属性
項目だけだと当たり障りない感じですね。。。
現在の役職や職業が、年収、学歴、居住地にまで結びついていて、動機に一貫性が出たのが興味深かったです。
ユーザージャーニーマップ作成
プロダクトの利用フェーズを定義し、その時々の欲求・目標(ゴール)、タッチポイント、感情や思考について整理しました。
サービスの性質上、利用継続時にモチベーションの低下が激しくなることがわかりました。
このタイミングでの離脱にフォーカスし、どんな課題や解決策が考えられるについて、アイデア出しをすることに決めました。
8アップ
8アップは、30秒でアイデアを1つ書き、10秒の休憩を挟んで、合計8個を書ききるという作業です。
紙をA4サイズのコピー用紙を8つ折りにして、絵やテキストを書きなぐります。
その後、それぞれが自分のアイデアについて、1分で簡単に発表するという工程を踏みます。
このサイクルを2回繰り返すと、後半はみんな頭を抱えたり、ツラそうな表情を浮かべていました。
普段アイデア出しといわれると得手不得手を考えてしまいがちですが、みんなしっかりやりきって、多種多様なアイデアが出てきたのは面白かったです。
開始時には、とにかく発散してアウトプットすることが大事で、自分だけわかればいいからうまく書こうとはしなくていいよと伝えてあります。
ストーリーボード作成
8アップで出たアイデアをもとに、絵コンテの作成をおこないました。
基本構造は、3ステップの絵をかき、それぞれのステップに見出しと説明を記述し、アイデアにタイトルをつけるという流れで実施してもらいました。
ストーリーボード作成は、参加者によってスピードにバラツキがあり、はやくできあがった人が暇そうにしていました。ついつい追加で描いてもOK、と伝えたのが不幸のはじまりでした。
評価&投票
ストーリーボードを描いてくれすぎて、ものすごく時間がかかりました。
評価&投票の流れは3ステップです。
サイレント評価
アイデアをなるべく平等に扱うために、まずはストーリーボードを回収し、シャッフルしてからテーブルに並べました。
サイレント評価では、誰とも喋らず、描いてあることだけを見て投票をおこないます。
1つのストーリーボードに対しては1票まで、複数のストーリーボードに貼るのはOKというルールで、良いと思ったアイデアにシールを貼ってもらいました。
グループでの投票
次に、それぞれのストーリーボードについて、良かった点を話し合いました。不明点があった場合に限り、作成者に質問をして、深堀りをしました。
1人2〜3個くらいあったりで、1個3分としても、特に時間がかかりました。
提出するのは、1人ひとつまでというルールにすべきでした。
スーパー投票
最後にあらためて、ひとつのストーリーにだけ貼れるスーパーシールを配り、最終投票をおこないました。
可視化された票をみながら、どのアイデアを具体化していくかを決め、この日のタスクは完了となりました。
振り返り
最後に、今日のデザインスプリントに関して、良かったこと、改善したいことについての振り返りをおこなしました。
ファシリテーター的な反省点もあわせて記載しておきます。
良かったこと
- 想像していた以上にアイデアがたくさん出て驚いた
- ぼんやりしていたペルソナ像が具体的になって認識を統一できた(似顔絵がけっこう大事だった)
- 日々仕事に追われていたけど、今日は特にプロダクトに向き合えた
- ユーザージャーニーをまとめたことで、良い体験をつくるための指針が見えるようになった
- 無駄なものをつくらなくて良くなる感じがした
改善したいこと
- 時間をどのくらい厳格に守るかの基準がわからなかった
- 付箋やボード、プロジェクターが見えづらいときがあった
- 本当に何も考えず発散だけしてていいのかわからなかった
- はじめから実現可能性も考慮しといたほうが良かったかもという意見が出た
- 優れたアイデアの実現に向けてどうするか、を考える時間と捉えたほうが良さそう
- シール数が見えてて、投票時にバイアスがかかっちゃった
- ペルソナが物理的に存在している感じにできるともっと良かったかも
- ファシリテーターと書記は別にしてもいいのかも
- 説明を聞いてばかりの時間があった、特に午前中
- 知らない単語をスルーしちゃったときがあった
ファシリテーター的な反省点
- あまりしゃべっていない人に話をふる余裕がなくて早々に諦めちゃった
- 音楽ははじめから必ず流したほうがいい、インストとか
- スケジュールとルールは事前にプリントして配布しておくべき
- 1分ずつで参加者自己紹介やったけど、初回は必須と思われる
- ホワイトボードに簡易的に座席表を書くのが良さそう
- 8アップはとにかく8個出そうじゃなくて、新しいアイデアをひねり出すのが大事という伝え方のほうが良かったかも
- ペルソナ、ジャーニー、ストーリーボードは、仕上がりサンプルを用意しておくべきだった
- ペルソナとジャーニーは50分だと明らかに時間が足りなかった
- 良いアイデアを決めることではなくて、試すことに重きを置くべきだった
- 時間厳守で、粗くても次のステップへ進むべきだった
- 作り込むことには価値がなく、フィードバックによる学習を積み重ねるのがそもそもの目的なため
- 途中でカメラ片手に進行をしていたら脳がバグったのでやめたほうがいい
結果がしょぼかったらファシリテーターの責任…!
そのためにはあらゆる事柄についての知識や経験が必要…!
と、かなり気を張っていたのですが、もっと肩の力を抜いて、周りに目を配ることを意識したほうがよかったかもしれないです。デザイナーが人員として少ないため、最悪サポーターが確保できなくても1人で回しきれないか、みたいな目線で取り組んでいたせいではありますが。
次から必須の持ち物
- 物理的な時計
- 部屋になかったうえにスマホを使えないルールだったため
- 音がなるストップウォッチ
- 時間をはかってはい終了です〜と声がけするのではなくて自動化する
その他
- 写真をまとめて選別してすぐに共有できると、けっこう満足度が高いと思われる
- ペルソナ、ジャーニーはあまり時間をかけずに、清書せずとも即共有すべき
まとめ
というわけで、今回は1日短縮版のデザインスプリントを実施しました。
このあとの、プロトタイプ制作からのユーザー評価が一番大事なところだということは理解しているつもりですが、関係者の目線合わせからはじまり、アイデアを発散し、収束させて、有用かどうか評価すべきものが分かる状態までは進めたのではないかと思います。
デザインスプリントは、一回やるだけでなく、何度もやることで質があがっていくものと言われています。
今後も、実現可能な粒度になってしまう予感はしますが、デザインスプリントによる変化や成果を可視化して、有用性を理解し、発信していけたらと思います。
募集
スタートアップテクノロジーデザイン部では、デザインスプリントを導入してみたいという企業様を募集しております。
どんなときに有用で、どんな効果があるかについて、個別に詳細をお話させていただきますので、是非ともお気軽にお問い合わせください。
また、事例が表に出づらいフレームワークなこともあり、雑に誰かとデザインスプリントについてお話したいという気持ちが高まっています。こちらはもっとラフにご連絡ください。飲みにでもいきましょう。
最後に、デザイン部ではUIデザイナーを募集しております。
スタートアップテクノロジーは、「起業家に機会を。世界に価値を。」というミッションを掲げ、クライアントワークを中心に担当している会社です。
もし少しでも興味を持っていただけた場合は、採用資料やデザイナー求人内容をご確認くださいませ。
https://startup-technology.com/recruit/
以上、1日短縮版デザインスプリント実施レポートでした。